カヴェコ「リリプット」驚くほど小さい!個性派の万年筆
こんにちは、クリポンです。
カヴェコにはリリプットという名の万年筆があります。キャップを閉めると10cmに満たない、手のひらサイズの極小ペンです。
この万年筆は1910年に登場したモデルというから、何とも驚きます。しかしシンプルデザインということもあり、古さを全く感じない個性的なペンです。
いろいろな種類の金属で揃えると楽しいかも!今回はカヴェコの万年筆「リリプット」をレビューします。
KAWECO Liliput 金属の違いで揃えたくなる!愛らしい万年筆
100年越え! 古くからあるリリプット
カヴェコ「リリプット」の万年筆です。
1883年にドイツで創業したカヴェコ。中でもリリプットは古くからあるモデルの一つです。
1910年発売のリリプットは、当時はエボナイト製でした。現在は使用素材が変わり金属製となり、カヴェコスポーツやスプラ同様、金属の違いを楽しめるモデルでもあります。
カヴェコで銅製の軸があるのはリリプットのみであり、それが私がリリプットに興味を持った理由の一つです。
とても小さな万年筆なので一見書きにくそうですが、キャップを後部に付けるとそれなりの長さになり、なかなかの使い心地です。
リリプットの兄弟モデル「スプラ」
このリリプットのデザインを基にして、2016年に登場したのがスプラです。
左のゴールド(真鍮)がスプラです。リリプットの小ささと対照的にスプラは大型モデルで、ニブの大きさも違います。
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リリプットの名前の由来
可愛らしく響きの良い名前のリリプット(liliput)、どこかで聞いたような名前だなと思っていたのですが、そう、ガリヴァー旅行記に出てくる国の名前でした。日本語ではリリパットと発音することが多いです。
ガリヴァー旅行記は1726年に出版された、アイルランドの作家ジョナサン・スウィフトによる小説です。小人や巨人の国などにガリヴァーが旅行します。
リリパットは小人が住む、南インド洋のオーストラリア近くにある、架空の島の名前です。小人は15cmにも満たない、非常に小さいキャラクターです。
ところでリリパットに住む小人をlilliputianと言います。現在も英語にはこの言葉が残り、非常に小さいもののことをlilliputian(形容詞)と言います。
例えば大人になってから幼稚園や保育園に行ったとして、園児の机や椅子を見た感想がlilliputian!となるのです。
金属いろいろな!リリプット
リリプットには6種類の軸が揃っています。全て金属軸で、素材はアルミニウム、ステンレス、真鍮(ブラス)、銅(カッパー)の4つがあります。万年筆の他、ボールペンとローラーボールがあります。
金属によって質感が変わり、重さにも違いがでます。万年筆についてはアルミニウム軸の場合は10gと軽く、それ以外は20gを超えます。
ショップのカラー名でブラックとシルバーと書かれているのはアルミニウム製、ステンレスとファイヤーブルー(火で炙って青く色付けしたもの)はステンレス製です。
ニブについては日本で販売されているのはF(細字)とM(中字)のみです。
本来カヴェコからはニブは5サイズ(EF,F,M,B,BB)出ています。他のサイズに変えるには別売りのニブのみ購入して交換する方法があります。
銅・真鍮 vs アルミ・ステンレス、どちらを選ぶ?
写真にあるのは銅(カッパー)の軸で、赤みのあるオレンジの綺麗な色です。個人的には満足している銅製軸ですが、選ぶ前に2つの点を知っておくと良いでしょう。
一つは銅や真鍮は使っているうちに表面がくすんでいき、マットな見た目へと変化していきます。銅の変化はとても早く、空気にさらしているだけでどんどん変わっていきます。
もう一つは銅や真鍮は金属臭が強く、特に銅の方が臭いが手に残りやすいです。
もし臭いや経年変化で表面が曇っていくのが気になるようであれば、銅や真鍮ではなく、臭いがなく変化の起こりづらいアルミニウムかステンレスの方が扱いやすいです。
リリプット万年筆の特徴は?
私が思うリリプットの特徴を挙げてみます。一つ目はサイズ、二つ目はカートリッジについてです。
1. 極小サイズの万年筆
リリプットの最大の特徴はサイズにあり、カヴェコのラインナップだけでなく、世界の他メーカーと比べてもとても小さい万年筆です。
キャップを閉めた状態で9.7cmと、親指と人差し指で簡単に挟めるほどの長さです。
シグノのペンと並べると、よりサイズ感がつかみやすいかもしれません。
小さいですが銅なので重さは23gあります。アルミニウム製のリリプットは10gほどと軽量です。
キャップで延長してちょうど良い長さに
携帯するのに良いミニサイズのペンですが、気になるのは書きやすさです。リリプットはキャップを外すとさらに短くなり、ペン先から尻軸まで8.7cmしかありません。
さすがにこれでは軸が短すぎて握りにくく、書きにくいです。
しかしキャップを後ろに繋ぐことで12.4cmまで伸び、書くのにちょうど良い長さになります。
軸径は9.5mmです(シグノの軸径は10mm)。細めではありますが、10mmほどならば細すぎるということはないと思います。
ネジ式でちょっと面倒な点も
カヴェコの万年筆キャップはネジ式です。引き抜くだけでよい嵌合(かんごう)式に比べると、一手間かかるのがデメリットとなりますが、まあ慣れるものです。
ただキャップを後部に繋ぐ時もネジ式となります。キャップを外す時と後部に付ける時、2回ネジを回すとなるとそれなりの手間となり、ちょこっとだけ書きたい時などには面倒です。
私なんかは書くのが一言二言だけなら、軸が短いままという時が結構あります。長くした方が書きやすいと分かっているのですけれどね。
2. リリプットはカートリッジしか使えない!
リリプットの2つ目の特徴は、その小ささゆえにカートリッジしか使えないということです。特徴というより、人によってはがっかりな点かもしれません。
軸が短すぎてコンバーターが収まりきらず、ミニコンバーターでさえも、装着すると軸より長くなってしまいます。
昔はリリプット用のスクイーズコンバーターというのがあったのですが、使い勝手があまりよくなかったのか、現在は販売終了となっています。
リリプットで使えるカートリッジは?
カヴェコの万年筆は国際規格をとっているため、他メーカーの国際標準のカートリッジも使用できます。リリプットはカートリッジしか使えないと言っても、選択肢はそれなりにあります。
でもやっぱり、お気に入りのボトルインクも使いたくなりますよね。その場合は、使用済みの空いたカートリッジを洗って乾かし、スポイト(注射器型)でインクを注入して使う方法もあります。
ただしこの方法をとると、使用中にインク漏れを起こす場合もあるので、自己責任で行ってくださいね。
こちらは試し書き、Mニブです。
インクはグラフ・フォン・ファーバーカステルの夜桜です。
転がり防止に!リリプット専用のクリップも存在します :
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カヴェコが日本企業と勘違いされている!?
日本では海外メーカーとして知られているカヴェコですが、どうやら海外ではカヴェコを日本企業だと思い込んでいる方が少なからずいるそうです。日本人的には「え、なんで??」と首をかしげてしまいますが。
KAWECOのように「オ」の発音が最後にあると、どうも日本語っぽく思われるようです。その理由の一つに、男女を問わず「オ」の発音で終わる名前が多いことがあると思います。昔から名前の定番として「〇〇コ」「〇〇オ」などがあり、現在もアルファベットにしたときに「O」で終わる名前は少なくありません。そんなことからも日本のことを少し知っている人にとって、Oで終わる単語は日本的なイメージにつながるようです。ちょっと面白く感じた海外事情でした。